武信さんが亡くなってから、斎藤孝彦さんとプロフェッションを語る会の大塚さんから2017年の住宅部会の日「武信さんに聞く」の記録が送られてきました。部会長を務めたこの年は渡辺武信さんや斎藤孝彦さんを交えての話合いもあり楽しかった。以後、語る会も6年目となりました。
それでは、堅固に感じられる家とは、具体的にどういうものだろうか。それを一言で言い表すのは難しいが、少なくとも、やたらに立派で堂々たる偉観を誇るような邸宅ではないことは確かである。人によって感じ方の程度が違うだろうが、住む人を威圧するような住宅は、精神的な嵐の際に頼りになるものではない。頼りになるのは、住み手の生活感・人生観に調和し、またある程度住みならされることによってその調和が時間的な厚みとなって蓄積された結果、その人にとって「これが私の場所だ」と思える感じが、すみずみまで行きわたっている家であろう。
嵐に耐える存在ということからすれば、家のイメージは城や要塞であってもよさそうだが、ぼくがそうしたイメージを避けるのは、城や要塞というと、なにかそこに籠っている人間さえも威圧するような超越性が入りこんでくるような気がするからだ。それに対して船というイメージは、それがどんな巨船であるにしても人間の意志で操れるという感じがあって好ましい。家は人間を保護してくれる堅固さをもって欲しいが、人間を超えたものであってはならない、とぼくは考える。ぼくは、うららかな日にはのんびりと、嵐の日には緊張して、自分の船を操り、時の海をよぎっていく船長でありたい(もっとも実際には船長は妻であって、ぼくは機関士ぐらいなのかも知れないが、それはどっちでもよいことだ・・・・・・)。
武信さんの御本をまた振り返る・・・
ぼくの家も築47年目を迎えた。最初はぼくの設計ではないが、数回の改修設計を経て、馴染んできました。武信さんの言われるように確かに船・・・
(C) 文・かたくら たかゆき
住まいの設計活動を通して住まい専門の建築家がありのままに毎日の生き方を語ります。
クライアントの方たちや家族そして自然との対話の中で常に暮らし向きの良い住まいを創造したいと思います。
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