今週のコラム300回記念!となりました。毎週火曜日に記録を続けて2005年5月から今年の5月には、6年間続けたことになる予定? 日々・・・暮らしや住まいについての雑感を自由に述べてきたのですが、 さて
敬愛する映画評論家であり建築家・渡辺武信さんの「住まいのつくり方」等中公新書 は何回も読み今では僕のバイブルなのです。 ここで武信さんは 「自邸に対する愛着と誇りが価値を維持」と述べています。
[ しかしそれは、ただ持ち続ければいいというわけではない。住まいは、どんなにつくる技術の点で優れた耐久性をもったものであっても、維持管理のための手入れが必要だし、長い歳月の間には住み手のライフサイクルに応じた改良もしなければならない。そしてそれをやり続けるためには、自分の住まいに対して愛着と誇りを抱かなければならない。
欧米人が住まいに対して抱く愛情と誇りの好例として思い出されるのは「ローズ家の戦争」89という映画である。この映画ではキャサリン・ターナーとマイケル・ダグラスが演じる夫婦が、古びてはいるが素敵な家を買い、それを長年の間に手入れや改造を続け、理想の住まいに仕上げていく。それがあまりに理想的になったため、二人が離婚することになると、ほかにも財産があるのに、共にこの住まいを欲しがり、ついには離婚しても同じ家を区画して住むことになるのだ。
別れ話が生じてからの悲劇的状況はともかく、理想の家を目指しての努力の段階は共感しつつ楽しく見られる。欧米の映画にはこのように住まいに歳月をかけて手入れを施してゆくお話が「心みだれて」86、「ゴースト ニューヨークの幻」90、「マネー・ピット」86などたくさんある。
このような例からもわかるように、住まいを二十年あまりで廃棄する耐久消費財ではなく、真の資産にするためには、耐久性の高い住まいを単に買うだけであってはならないと思う。先に述べたようにつくる技術における物理的耐久性は確実に向上している。住み手はそのなかからデザインを含めて愛情と誇りを抱けるに足る住まいを選び、それを理想の住まいに育て上げる心構えをしなければならない。
つくる側からは省資源と環境保護という時代を象徴する社会的思想の流れに応じて、耐久性の技術が生み出されてきた。しかし技術は直接には思想を生み出さないとすれば、今度は住み手の側が、物理的耐久性の技術に社会的耐用性を付加する思想、つまり使い方、住まい方の思想を生み出さなければならない、というのが世紀の節目の状況ではないだろうか。
21世紀とはその思想を育むことによって、住まいもヴィンテージ・ワインやクラッシック・カーのように古いことにも価値がある恒久的な資産になることが期待される時代なのではないか。・・・ ]
さらに 日本の住宅が質よりも量を優先した戦後の住宅不足の状況を述べ数量的には住宅不足は解消されても、農村の過疎化による空き家が増え、首都圏内ではまだ住宅の需要がある。人々が求めるのは新築住宅で、敷地に住宅が建てられていても上物として取り壊される運命にあるとのべる。
そして結びに
「 このような事態を解消し健全な中古住宅市場を形成するためには、住み手が愛着をもつことと、それに値する住まいが市場に存在することが共に必要である。とくに中年以降に新たな住まいを建てる世代には、一生住み続けてもいいという気持ちで終の住まいを建てる気持ちで家づくりをしてほしいものである。 」 と述べられています。
オソラク・・・僕はこうした住まいを残せるのが建築家の仕事であろうと思う。
これからは一度作った住まいはクライアントのライフスタイルにあわせて改良することはあってもできるだけ壊さない。どこまで生きながらえていくか、それをちゃんと考えて設計してくれる人を選ばなくてはいけないと思う。
武信さんは、かっこよくまとめています。
「 しかし、私がここで主張したいのは、富豪の豪邸ばかりでなく、一般庶民、少なくとも住意識の高い中流上層に属する人々(私のクライアントの大部分がそうである)が、自邸を建てるとき、ちゃんとした建築家に設計監理を委託し、委託された建築家と共に、耐久消費財的ではない、文化的な発想で「終の住まい」を建てる気概をもっていただくことである。それは長い目で見ればスクラップ・アンド・ビルドの日本の現状を変え、省資源であり、かつ生き延びる(sustainable)文明を築くことにつながるのではないか。」
この本の書かれた時期は少し前になりますが、時代は確実にリノベーション、コンバージョンの時代となりました。そして地球環境保護のためにも自然エネルギーを使用したエコな建築がテーマです。設計していくのには基本的な構造(環境への対応を含め)がタフでなくてはなりません。
手がけてきた住まいの改修も17年前に増築した同級生K君の住まいは車椅子の生活に合わせてバリアフリー改修をしました。築19年目を迎える「八ヶ岳を望む家」はデザイナーのТさんが縁あって住み繋いでいただくことになり少しづつ改修をします。
今後も新築・増改築・減改築・修景・を通して規模の大小に関わらず身近なところから生き延びる住まいの創造を続けていきたいと思います。
Ⓒ 文・かたくら たかゆき
住まいの設計活動を通して住まい専門の建築家がありのままに毎日の生き方を語ります。
クライアントの方たちや家族そして自然との対話の中で常に暮らし向きの良い住まいを創造したいと思います。
住まいをもっと豊かに心地よく/片倉隆幸建築研究室FANPAGEもどうぞ!
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